通信第79号「巻頭言」より
ヤコブの手紙3編1節~18節
知識はわたしたちの頭に蓄えられた様々な情報ですが、知恵はそのような知識を活用する力と言えるのではないでしょうか。イスラエルの王ソロモンは全ての人に勝る知識、並びにその知恵でも有名です。例えば聖書には次のような話が書かれています。二人の女が一人の赤子を取り合い、互いにその子は自分の赤子と言い張ったためにソロモン王の裁きの前に連れて来られました。ソロモン王は二人の女の言い分を聞くと、その子を真っ二つに切ってそれぞれの母親に与えるよう命じました。それを聞いた女の一人は心が痛くなって、どうかこの子を殺さないでください、あの女にあげて下さいと叫びました。ソロモン王はその女こそが本当の母親であることを明らかにしたのです。聖書には二つの知恵があると言います。一つは「この世の知恵」であり、もう一つは「上から出た知恵」です。この世の知恵はわたしたちが学校や書物、また自らの人生や社会経験から身につけるものです。それに対し「上から出た知恵」は教会に行き、聖書を読み、主イエスを知ることによって身につけるものです。「この世の知恵」と「上からの知恵」とは一致する場合もありますが、一致しない場合も多くあります。たとえば、コリント一1章に「十字架につけられたキリストは…ユダヤ人にはつまずかせるもの、異邦人には愚かなものですが、…召された者には、神の力、神の知恵である…」と書かれている通りです。
8月は敗戦の月です。日清戦争(1894年)、日露戦争(1904年)、韓国併合(1910年)、満州事変(1931年)、「満州国」建国(1932年)、太平洋戦争(1941年)と隣国への侵略と戦争が続きました。天皇は現人神として礼拝され、日本は神国でした。しかし、本土は空襲に見舞われ、広島、長崎に原爆を落とされ敗戦となりました。「この世の知恵」では大陸での利権や石油資源の確保は欠かせないものであったでしょう。富国強兵こそ日本の生きる道でした。しかし、「上から出た知恵」はこのような考え方に反対します。神以外のものを神とすること、人を殺すこと、また嘘をついたり、略奪行為などはしてはならないことです。
先日、来日されたクリスチャンパートナーズ、シンガポールオフィスのジェムス・ライ牧師はわたしたちが現在行っているインドネシアのカリマンタン地区だけでなく、メコン川流域に住む貧しい子供たちへの学費援助の必要性をも力説されました。スライドを見ながら彼の説明を聞く時、心が痛みました。戦争によってアジア諸国に多大な迷惑をかけたわたしたちは、そのような過ちを二度と繰り返さないということだけでなく、いろいろな国の人たちと共に働くことによって、平和をこの世に築いていかなければならないと思うのです。
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